新潟で家具の補修・修理・塗り直し・再生などを手掛ける「愛着工房いしかわ」の孤軍奮闘ブログ

新潟県阿賀野市にて、ひとりで家具や住宅内部木部の補修などをやってます。オリジナルダイニングテーブルなど家具も製作してます。

座卓の修理・塗り直し

久々にちゃんと写真を撮りつつ作業をした仕事がありますので、

ご紹介いたします。

 

昨年10月頃に、電話でお問い合わせいただいていた座卓の修理ですが、

どういうわけか異常に忙しく、ようやく年末にお客様のお宅へお伺いし、

見積もり、補修方法説明の上、品物をお預かりし、

年明け早々から作業にとりかかりました。

 

まずは、お預かりしたままの状態写真。

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埃も乗ってますが、細かい無数の傷、色剥げ、輪染みなどが見られます。

 

まずは、古い塗膜と木地をある程度研磨して落とします。突き板の可能性大なので、様子を見ながら落としていきます。

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黒檀かと思われましたが、おそらく花梨材に着色して黒檀に見せてます。よくあるタイプです。斑になって落としてますが、これは完成すれば問題ありません。

 

脚の部分もすこし研磨し、黒檀色に染色します。色はその都度、調合します。

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ここで完成時の色に極力近づけておくことで、濃い色でも木目が消えない自然な仕上がりになります。

 

そして、下塗り。

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三回ほど様子を見ながら下塗りします。

 

この後、さらに研磨し、カラーリングで色を整え、仕上げるのですが、写真をとり忘れました。出し惜しみではありません。うっかりしてました。

 

そして、完成。納品。

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木目も出て、上品な艶。また末永くお使いいただけるでしょう。

仕上がりを見て、追加であと3卓、依頼されました。ありがたいことです。

住宅リフォームにおける天井などの塗装について

先日、リフォーム物件の天井の塗装に行ってきました。

実はこの現場、他の住宅塗装屋さんが入っていて、大部分はその業者が行っていたのですが、どうしても天井回りだけは、設計士さんの要望通りできないということで、僕のところに仕事が回ってきました。

 

設計案が出た時点で、その塗装屋さんからは、仕事をお願いするかも知れないと言われていたのですが、その時点では、古民家風にするということでしたので、いくつかそういう物件をやっていた僕としては、気軽にOKを出していました。

 

参考までに、僕が以前やった古民家風リフォーム写真を。

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この写真に写ってる木の部分、ほとんどすべて吹き付けで塗ってます。古材、新材、入り混じってますので、同じ様にするには吹き付けが最良の手段。ちなみに建具もリフォーム。床は刷毛塗りで仕上げてます。

 

あと、これも以前やった普通の和室の天井。

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上が塗装前、下が塗装後。こんなにイメージ変わります。

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色合いを変えた部屋はこんな感じ。

 

しかし、実際に施工という間際になって、

古民家風はやめて、既存の格天井を白とグレーの市松模様にしたい、ということになりました。

 

マジですか!?

 

思わず言っちゃいましたね、その塗装屋さんに。

 

でもまあ、いったん引き受けたので後には引けません。

とりあえずは木端でサンプルの色見本をつくり、提出。

OKがでたので、作業をすることにしました。

 

ですが、サンプルはあくまでもサンプル。

木の種類は一緒でも、既存の天井の木とは違うし、なにしろ経過年数や

染み、取りきれない汚れ、光の当たり方、木目の入り方等々、現場でやってみなければどうなるかわかりません。その中で予算等を含めた最良の方法を見つけるしかありません。

 

実際、サンプル作成時の材料で一部施工しましたが、発色等、どうも違います。

材料や色の配合を現場で調整し、何度か試行錯誤して、ようやく基本となる白の升目の一つが完成。僕の中では、白柿渋のようなイメージで吹き付けました。とは言え、白と一言で言っても、色々あるわけで、僕のイメージが正解であるとは言えません。この段階で設計士さんを呼んでもらい、確認してもらいます。

 

結果、OKが出て、まずは、白にする部分を吹き付けで仕上げていきます。木目が消えないように、薄い色の材料を何度か注意深く吹き付けていく作業です。

白が完成した後、グレー部分を仕上げていくわけですが、これは、基準となる白に違和感なくマッチするグレーということで、僕に任せていただきました。脳内イメージは屋外で風雨や日光に晒された杉板のグレーといったところでしょうか。もちろん、木目を消すほど濃い色はつけられません。

 

施工前の写真はありませんが、無塗装の杉板の格天井です。経年の光による焼けや染みなども点在してました。

 

施工後数日経ち、本日、写真を撮ってきましたので掲載いたします。

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う~ん、思ったよりモダンでしっかりと和風感覚もあり、けっこういいですね。

アップにすると

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各色とも木目がきっちり確認できます。

 

このお宅では、キッチン用の家具とTVボードの塗装も(塗装屋さんより)依頼されました。

 

塗装屋さんから依頼される塗装の仕事(下請という意味ではなく)は、

いわば同業プロから頼られるということで、相当なプレッシャーの中、納得される仕上がりを求められるわけで、その場合は、こちらとしても、どのようにすればよりより仕上がりを得られるかを提案しつつ仕事を進めるわけです。今回は予想以上にうまくいった仕事だと思います。

 

帰り道、なんだか必殺仕事人みたいだな、と、我ながら思った次第です。

ケヤキ座卓塗装 無塗装品を仕上げる

今回の依頼は、ケヤキ座卓の塗装。

これは、半分趣味で木工をされている方の作品です。

趣味と言っても、この座卓も頼まれて作っているので、ある意味、プロですね。

完全に趣味の域を超えています。

 

人が多く集まった時などに、現在あるケヤキの座卓の横に並べて使いたい。

ということで、色や艶などを、その座卓にあわせる必要がありました。

こうなると、素人の方では難しい塗装になりますね。

(ちなみにそのお宅で現在使用中のケヤキ座卓は、僕が3年ほど前に、補修塗装したものです。玉杢が見事な座卓で、今ももちろん、綺麗な状態を保っています)

 

 

趣味で木工される方はたくさんいますが、最後の仕上げの塗装で

作品を台無しにしてしまうことをよく見かけます。

塗装材料や道具を揃え、丁寧に時間をかけたのに、失敗し、

結局、うちみたいなところに持ち込む。そういう事例も多いです。

一度素人塗装がされているものは、皆さんの想像以上に手間がかかります。

結果、予算も上がってしまうので、不安があれば、最初からプロに頼みましょう。

特に、座卓やテーブル、椅子など、普段酷使されるような家具は、

そのようにすることを強くおすすめいたします。

 

さて、無塗装のケヤキ座卓。ケヤキは部位によって木目も色合いも違いますね。

まあ、他の樹種でもそうですが。

 

塗装は、木の化粧だと僕は考えております。

塗装をして、木の持つ美しさ、魅力をより引き立たせる。

その上で、日常使う家具の耐久性を上げる。

使う顔料や染料の種類、下塗りに使う材料、研磨の仕方、仕上げ材の選定。

そういうものをトータルに考えて、いかに本来持つ木の魅力を引き出すか。

そこに、難しさがあり、楽しさがあるのです。

そして、その美を長持ちさせるというのがプロの塗装です。

今は綺麗でも、すぐにその魅力を半減させてしまうようでは、信用にかかわりますからね。

 

今回も動画による紹介です。いつも画質が悪くて申し訳ないです。


ケヤキ座卓の塗装 無塗装品を仕上げる - YouTube

JBLのすごいスピーカー補修しました

昔、喫茶店をやっていた頃は、けっこういいオーディオで

ジャズやボサノバなどを鳴らしていまして、

お客さんの中にもオーディオマニアな方々がたくさんいらっしゃいました。

僕のオーディオに関する知識は、その時に得たものです。

僕はオーディオマニアになるお金もなく、ただひたすらいい音楽を求めていました。

 

そして、つい最近、某所からスピーカーのボックスを綺麗にできるか?

という問い合わせが来ました。

スピーカーボックスは以前にも補修したことがあるので、

たぶん大丈夫と答えたのですが、実物を見ると、、

JBLのパラゴンじゃないですか!!

あ、いや、ちょっと違う。聞けば、パラゴンより気持ち小さい

JBLのメトロゴンと言うらしい。1950年代の素晴らしいスピーカーです。

 

このスピーカーの天板に染みやら傷やらついている上に、なんだか色も褪せている。

そのへんを綺麗にしてください、と言うことで、正式に依頼が来た次第です。

 

それにしてもアメリカさんが作ったとは思えない(失礼)素晴らしい造り。

今でも完全に他を圧倒するデザインと存在感です。

 

さっそく仕事にとりかかります。

現状は、天板がかなり傷んでいます。突き板ですので、手荒くは削れません。

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変色しているところは、パテが入ってました。一度修理されたと思われます。

 

そして、注意深く、ここまで塗装と木地を削りました。

アメリカの家具はだいたいラッカーが塗ってあります。

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正直、ここまでするのにそうとう手間かかります。

 

そして、染色、下塗り、中塗り、カラーリング、仕上げ。艶も正面に合わせます。

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正面や側面の傷は、タッチアップ程度の補修ですが、ほとんど目立たなくなりました。

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かなり神経も使ったし、面倒な仕事でしたが、お客様に感動されるほど喜んでいただき、職人冥利につきる仕事でした。

ちなみに、このタイプのJBLスピーカーを作る職人はもういません。最後の職人は日系アメリカ人だったらしいです。納得です。

漆塗り座卓の塗り直し

おそらく新潟塗りの漆塗り座卓。

処分しようと思ってたけど、やっぱり長年使って思い入れがあるので、

治してほしいという依頼が来ました。

 

現状は脚のガタつきが見られることと、

塗りが経年劣化でどんどん落ちてきているのが確認できます。

 

天板を雑巾で拭く度に、赤いものが付いてくるということでした。

こうなると、もう劣化は止まりません。

 

僕も漆が塗れないことはないですが、

予算的な都合上、家具用ウレタン塗料で塗り直すということになりました。

ウレタン塗料というと拒否反応を示す方がいらっしゃいますが、

食器などにも使われていますし、

塗り方を間違えなければ、木の保護や化粧といった観点から、優れたものです。

耐久性もよく、手入れも簡単ですので、

僕はほとんどウレタン塗料で補修をしています。

 

この手の座卓は、ご覧のように地模様が入っていますので、

下まで漆を落とすと、まったく趣の違うものになってしまいます。

かといって、完全に新品当時の姿を復元するとなると、

相当な時間と手間を要し、手頃な価格では治すことができません。

予算とお客さんの希望などをよく話合いながら、修復方法を決めていきます。

 

結果、模様は現状程度は残し、色あせがあまり目立たなくなる程度まで、

多少ブラウン系の色でカラーリングし、仕上げることにしました。

模様があまり消えてしまわないように、染料系でカラーリングし、

クリアーは3回吹き付けています。

 

当然、色落ちは止まり、今後も長くお使いいただけると思います。

処分してしまわないで、ほんとうによかったと思います。

 

今回も動画での説明です。

毎回、台本も書かず、一発撮りで、思いつくまましゃべっていますので、

噛んだり、お聞き苦しい点も数多くあるかと思いますが、ご笑覧ください。


漆塗り座卓の塗り直し 新潟 - YouTube

 

座卓 ダイニングテーブルの修理補修 塗り直し

「愛着工房いしかわ」へ、最も多く補修依頼が来るのは、たぶん、座卓です。

今は和室も少なく、座卓があるお宅も少ないと思いますが、

座卓はいつも家族の中心にあったというご家族も多いでしょう。

かつては囲炉裏が、その役割を果たしていましたね。

 

座卓は新築祝いに頂いたり、お父さんがこだわりの品を注文したりと、

古くなったからと、簡単には捨てられない思い出も詰まっているものです。

 

そんなわけで、なんとかならないかと相談を受けるわけです。

 

今回の品は、おじいさんの代から使っているというケヤキの座卓。

表面に輪染みがついていたり、焼けや色あせがありました。

まずは、その汚れや傷を落とすために、表面を均一に削っていきます。

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そして、新たに染色、下塗り、中塗り、カラーリング、仕上げという工程をたどり、完成、納品。

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ご家族の方々には、たいへん喜んでいただいて、たくさんのおみやげまでいただいて恐縮です。

 

下の写真は、また違う座卓の完成写真。

昔の座卓は、材質も造りも、そしてなんと言っても持ってる雰囲気が違います。

普通の家具屋さんに相談すると、まず、間違いなく、

買った方が安いだのなんとか言われると思いますが、

材質も造りもダウンすると思った方がいいです。

なにより、思い出は売っておりませんよね。

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また、どこの家庭にもあるダイニングテーブルも、同じ様に生まれ変わります。

下のは、輪染みや鍋の跡、傷などがついていましたが、このように綺麗になります。

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普段使いのものこそ、きれいにして、長く使い続ける。

エコとかそういうことは抜きにしても、

そのことで、物を大切にする心を育み、そして、家族の歴史を伝え、絆を深めることもできるのではないでしょうか?

偉そうなことを書いてしまいましたが、

「愛着工房いしかわ」は、どんなものでも、愛をこめて再生に努力いたしております。

床の間(地板)出張補修

ずいぶん前の仕事となりますが、ご紹介したかどうか忘れましたので、

改めてご紹介いたします。

床の間の無い家もけっこうあるかと思いますが、

床の間があるお宅にとっては、ここが傷んでいると、とても気になると思います。

玄関の上り框なども、そうですね。

 

この時、おじゃましたお宅の床の間。

これはケヤキの突き板(ケヤキの木を薄くスライスして、表面に貼りつけてあります。一見、無垢板に見えますが、芯となる木材をケヤキの木目で化粧してあるとお考えください)で、熱いものか、水分のあるものを置いていたせいで、極端に白く変色してる所もあり、全体的にかなり傷んでいます。

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これ以上傷むと、補修できない状況となる可能性もあります。

前述のように、ケヤキの化粧板自体は、薄いものですので、

補修のために削る場合も、あまり削れません。下地が出てしまうとうまくありませんので。

 

そこで、様子を見ながら少しづつ削り、

これ以上はやばいというところで、色を調合し、

スプレーガンにて、少しづつ色を上げていきました。

そして、雰囲気のいい所で、仕上げのクリアー。

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白い部分は光の反射です。

 

なんとかここまで補修できましたが、

本当は、ここまで傷む前に補修するといいでしょう。

完全に傷んでしまうと、張り替えや大工工事が必要となりますので、

予算が大幅にアップしてしまいます。